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養子縁組Story#02 - Tokyo里親ナビ|子どもと里親の暮らしを知るサイト

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養子縁組Story

養子縁組Story#02

T田さんご夫妻(39歳×42歳)

「元気に、自分の思う道を進んでいけば、それで十分」

T田さんご夫妻は2017年10月に始まった東京都の「新生児里親」(新生児委託事業)でお子さんを受託した第1号となりました。生後5日で迎えたSちゃんは食欲いっぱいに育ち、現在約9・6キロに、すくすくと成長しています。新米パパ、ママとして奮闘するT田さんご夫妻は、「元気に育ってくれさえすれば」と、Sちゃんに最大限の愛情を傾けています。

                       (聞き手・文=村島有紀・写真=清水麻子)

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profile

T田さんご夫妻  <2016年、東京都の養子縁組里親登録>

妻(ママ)会社員。事務系派遣社員として働いていたが、Sちゃんを迎えるために退社。Sちゃんの保育園入園を機に、IT関連の職場に再就職した。飲むのが好き。夫(パパ)曰く「おおざっぱ」。

 

夫(パパ) 会社員(製造業)。 釣りなどアウトドアが好きだが、現在は子育て優先で趣味は封印中。趣味は、ガンプラ。妻(ママ)曰く「理詰めで考える人」社員。

※年齢は2019年4月現在

「初めての子育てに、手厚いサポートが役立ちました」

━━養子縁組については、どのように考えていましたか?

 

妻(ママ) 結婚したとき、私はすでに38歳。2人とも「子どもがほしい」と思っていたので、半年後には近所の産院で不妊治療を始めました。その後、40歳になって受診した大学病院で「治療とともに養子縁組という方法もある」と勧められました。

 

夫(パパ) とにかく後悔しないように、できることは全部やろうという思いで、東京都だけでなく、養子をあっせんするNPOにも登録しました。ただ「養親の候補になりたい」と何度も希望を出しましたが、なかなかお話がこない。そんなとき東京都が新しく新生児里親を始めると聞いて、これはチャンスだと思いました。

 

━━養子縁組里親と違い、新生児里親は事前にお子さんに関する情報を聞いて、エントリーするかどうかを選ぶことができません。迷いはなかったですか?

 

妻(ママ) これまで何度も、児童相談所から紹介はいただいても第一候補にならない状態が続いていたので、私たちは選べる立場ではないと思っていました。どんな子どもであっても受け入れようと。自分の子どもであっても障がいや病気のリスクはありますから。

 

夫(パパ) 私もそうです。また、どうしても実の子どもでなければ、というこだわりもありませんでした。どんな形であれ、子どものいる家庭が築ければいいなと。私たちの両親(祖父母)からも、「思うようにやっていいよ」と言われていました。

 

━━初めてSちゃんと対面したとき、どんな気持ちでしたか?

 

妻(ママ) 生まれて5日目に、二葉乳児院で初めて会いました。会った瞬間、気持ちが高まって…うれしくて…。やっと、この子に出会えたと。今までの活動が大変だったので、それまでの道のりを思い出して、涙が出ました。ミルクを飲んだあとのげっぷがうまく出なくて。二葉乳児院のスタッフさんから、肩に抱えて、出させる方法もあるよと教わりましたが、最初ははれ物にさわるよう。小さくて細くて、すぐに折れてしまいそうで、怖かったです。

夫(パパ) 研修室でみんなが見守る中での対面でした。本当に小さかったですね。でも、Sちゃんの笑顔を見ていたら、頑張らなきゃって自然に思うことができました。それに乳児院の手厚いサポートもありました。事前の研修で、新生児人形で一通りミルクの飲ませ方やお風呂の入れ方を教わっていました。Sちゃんに出会ってからは、乳児院に3泊4日で泊まり、育児の具体的な方法や、子どもとの向き合い方も学びました。実子を授かるよりは、しっかり準備ができたので、その点も良かったと思っています(※)。

 

※新生児里親は、赤ちゃんが誕生してから東京都から委託の依頼を受けます。委託を受けたいと思った場合は、まずは東京都の養子縁組里親として登録します。そして新生児委託説明会に参加し、面接・家庭訪問・研修などを受けて新生児里親に登録します。その後、東京都が新生児里親候補の中から、赤ちゃんに最もふさわしい里親をマッチングします。委託される赤ちゃんが決まって交流が始まると、二葉乳児院で専門スタッフの支援を受けながら、赤ちゃんと一緒に基本的に2泊を過ごします。その後、赤ちゃんとともに自宅で過ごす外泊交流に入ります(詳細は「新生児里親」Q&Aを参照)。

 

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1歳半になったSちゃんの手は、こんなに大きくなりました。

 

━━初めての子育て。自宅に帰った後、不安はありませんでしたか?

 

夫(パパ) やることが多すぎて、悩む暇もなかったですね。ベビーベッドや衣類、哺乳瓶、おむつなどの当面の消耗品も支給されましたので、モノ的に困ることはありませんでした。

 

━━新生児里親候補の中から選ばれたときの連絡は赤ちゃんが生まれてからですから、突然です。職場にはどう説明しましたか?

 

夫(パパ) 新生児里親の説明会に参加した当初から、「突然休むかもしれません」と、会社に伝えていました。もともと休むことについて、うるさい会社ではなかったし、ちょうど土日もあったので、それほど休むこともありませんでした。

 

妻(ママ) 不妊治療を止めたのは、2017年4月に転職し、治療のために休むことが難しくなったからです。その年の8月に新生児委託の説明会を受け、11月にSちゃんと出会いました。派遣社員だったので、育児休業の制度はなく、会社を辞めました。半年間はじっくり育児に向き合い、その後、週3日間保育園に預けることから始め、復職しました。昨年9月からは午前10時から午後5時までの勤務です。会社を辞めるのはデメリットではありましたが、Sちゃんとの出会いのほうが大切でした。

 

━━東京都と民間事業者との違いを感じますか?

 

夫(パパ) 民間の場合は、宿泊研修などがなく、ぶっつけ本番で子育てに向き合います。一方、児童相談所からの委託は事前の研修がしっかりしています。里親が集まるサロンも頼りになりますね。

育児で、朝型の規則正しい生活へ変化

━━親になったと感じるのは、どのようなときですか?

夫(パパ) 保育園に迎えに行って、だっこすると、満面の笑みを浮かべるんです。そんな笑顔をみるときですね。あと、祖父母がたまに遊びにくると、Sちゃんは顔を覚えていないので、私のところに逃げてきます。親とそれ以外の人の区別がつくんですね。

 

妻(ママ) 突然、母親という立場になって、大人の2人暮らしが一変しました。母親として一歩一歩、一緒に育っている感じがします。階段を一緒に上っている感じでしょうか。振り返ると、自然に、親の気持ちが芽生えた気がします。普段は考える時間がないというか、やることがいっぱいあるので。悩む暇がなかったかも(笑)。

 

夫(パパ) 生活の変化といえば、2人の生活のときは、夜の12時ごろまで起きていましたが、今は9時か10時に親子3人で川の字になって寝てしまいます。釣りなどのアウトドアが好きですが、休日は3人で近くの公園に散歩しています。 

 

T田さんの1日の暮らし

4時半

ママ 起床 洗濯 朝食、お弁当準備 お風呂掃除 保育園準備 掃除

6時 パパ Sちゃんを起こして朝食
7時半 パパ 出勤
8時15分 ママ Sちゃんと保育園に 
10時 ママ 会社に到着
17時 パパ ママ 退社
17時15分 パパ 保育園にお迎え
18時 3人で夕食
19時 お風呂 テレビなど
21時 3人で就寝
朝まで ぐっすり

保育園の名札が同じ苗字になって 

━━ちなみに特別養子縁組の手続きは、どんなふうに進みますか?

夫(パパ) Sちゃん担当の児童相談所の職員から「そろそろいいでしょう」という感じで言われます。その後、必要な書類をそろえて(※委託から9カ月後の)2018年7月に特別養子縁組の申し立てをして、8月15日に家庭裁判所に面談にいき、9月に家庭訪問がありました。

 

実親の承諾があるので、問題ないでしょうというお話だったので、今年の1月に審判が下りるまで安心して待つことができました。保育園の名札も、病院で呼ばれるときの名前も、同じ名字になったので、うれしかったですね。

 

※児童相談所の許可は、たいていは約半年です。T田さんの場合は、書類をそろえる関係で、少し 時間がかかりました。

 

━━3人とも雰囲気が似ています。

妻(ママ) 保育園の先生からも「ママと似ているね」と言われます。食べるのが好きな私と一緒に暮らしてライフスタイルが同じだからか、食欲旺盛です。他の家だとSちゃんはもっと、スレンダーだったかもと思いますね(笑)。離乳食などは、パパの担当だったのですが、汁物などよく食べました。

「がんばる子 できる子 良い子」は、望まない

━━Sちゃんに、実親について伝えるかどうか、どう考えられていますか?

夫(パパ) 里親の集まるサロンで、ある里親さんが、毎回誕生日のときに「もう一人の親がいるんだよ」という話をすると聞いて、私たちもそうしようと思っています。物心がつく前から、誕生日に伝えることで自然に理解するのではないかと。実親さんからいただいた手作りのベビー服も大切に保管しています。

 

妻(ママ) 「産みの親と育ての親がいるんだよ」と、普通にさらっと言えるといいなと思っています。保育園では、命について考える機会があるので、先生方にも、特別養子縁組だというお話をしようと思っています。

 

━━どんな大人に成長してほしいですか?
妻(ママ) 東京都の養子縁組の申請をする前の研修で、印象に残ったのが、子どもに「がんばる子 できる子 良い子」を望むのは子どもにとって良くないということです。親は、その子の応援をするだけです。元気でさえあって、自分の思う道を進んでいけば、それで十分です。

 

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日々の積み重ねで、人と人は、家族になっていく。

 

養子縁組里親さんに関心がある方へ
~T田さんご夫妻からのメッセージ~

妻(ママ) 養子縁組里親に関心のあるご夫婦は、十分、話し合ってみて下さい。2人が同じ目標に向かっていないと、厳しいと思うからです。そして2人の目標が決まったら後は猪突猛進! 結局、養子を迎えられるか否かはご縁なので、悔いが残らぬようやるだけだと思います。あと、自分たちの親や兄弟姉妹に理解を得られるよう、養子縁組里親とは何かについて、話しておくと良いと思います。

 

夫(パパ) 里親登録の講習で、先輩里親のお話が印象的だったので紹介します。それは、「周りから『顔が似ていない』ととなどと思われていても、自分たちは気にならない」ということです。なぜなら、自分たちはSちゃんと「親子」だと認識しているからです。今、里親になって強くそう思います。周囲の目など気にしない覚悟を持っています。

 

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Sちゃんは、絵本も大好きです。これから、どんなふうに育っていくのでしょうか。

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